道の駅で売っていたお手製の梅干しや漬物が買えなくなる日が来るのかもしれない・・・
食品衛生法の改正により2024年6月から漬物製造には保健所の許可が必要となりました。許可をとるために一定の設備基準が必要となるため、設備投資できない小規模農家が廃業していくのでなないかと言われています。
昔から受け継がれていきた日本伝統の味を、私たちは今後も食することができるのでしょうか?
法改正の驚くべき理由とその内容とは?
日本食がグローバル化していく中で、食中毒・異物混入の防止を強化する目的で食品衛生法が改正されました。
特に近年、小規模経営で食品を取り扱っている業種による食中毒や異物混入が多いことが、この法改正に至った経緯です。
今回、新たに営業許可を必要とする業種がいくつか新設され、漬物製造業はこの一つに含まれています。
新設された漬物製造業というのは、野菜などを漬け込んだもの(梅干し、浅漬け、たくあん、ぬか漬け、キムチ、ピクルスなど)を製造販売する業種が対象となっています。保健所の許可を取得するには一定の衛生基準が満たされていないといけません。
以下は衛生基準の一部です。このほかにも細かい基準が設けられています。
- 自宅の台所とは別の作業場で作る
- 作業は屋根付きの屋内で行う
- 網戸などで外からの虫やネズミ侵入を防ぐ
- 作業者の手洗い場を設置する
今まで許可を必要とせず、設備の揃っていないところで製造してきた業者にとっては新たに設備投資が必要になる内容で、少しの設備投資といえども負担は小さくありません。今後何十年も続けられそうな後継ぎや人材がいるのなら設備投資をして許可を取得するのかもしれませんが、高齢のおばあちゃんが一人で作っているお店なら廃業という選択肢を選ばざるを得ないのかもしれません。
漬物は保存食なのに衛生基準が必要なの?
食品を腐敗させる微生物の増殖を抑えるには、塩分濃度は高ければ高いほど有効とされています。日本では古くから食料の長期保存に塩漬けを活用してきました。身近な食品でいえば味噌(塩分13%)、醤油(塩分14%)、梅干し(塩分22%)などは塩分濃度が高く、微生物が増殖できないので長期保存に適していると言われています。
しかし近年減塩志向が高まり、塩分濃度を抑えた漬物が多く出回るようになりました。漬物の塩分濃度は5~10%くらいですが、少しでも塩分濃度が下がったり、温度が上がったりすると、微生物の増殖を抑えることができなくなってしまい、食中毒の原因となってしまいます。
漬物製造業に区分されている漬物の中にも梅干しのように塩分濃度が高く保存性があるものから、浅漬けのように塩分濃度が低く腐りやすいものまで幅広く含まれていて、区分の仕方が少し強引ではないかという意見も挙がっています。
本当にお店から漬物がなくなってしまうの?
これは、法改正によって衛生基準を満たさない漬物が販売できくなるという意味であり、お店の漬物が全てなくなることとは違います。しかし、この法改正が漬物業界に与える影響は非常に大きいです。衛生基準を設けることで賞味期限など衛生面で安心な漬物が販売されますが、逆に手作りの漬物が売り場に置かれなくなる可能性があります。衛生管理の行き届いた業者が製造した漬物はたいてい大量生産するため、生産コストを考えて比較的売れやすい塩分少なめの漬物がメインになりやすく、塩分多めの梅干しなどは減ってくるかもしれません。
どちらにしろ、漬物売り場の品揃えには今後も注目してきたいですね。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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